トランプ氏はなぜ勝ったのか?そして掲げる公約はどうなるのか?
2016/11/16
11月9日午後(日本時間)、クリントン氏優勢かと言われたアメリカの大統領選は、共和党のドナルド・トランプ氏の勝利で幕を閉じました。
ポジティブシンキングだった歴代大統領たちが国民の気持ちを盛り上げてきた今までのアメリカ合衆国。
それをネガティブな思考で国の現在の欠点を挙げていき現実に立ち戻らせ、疑心暗鬼な気持ちにさせ国は大丈夫なのかと不安にさせるトランプ氏に対し、今までの大統領のようにポジティブに前向きに「そうでもない」と対抗したクリントン氏でしたが、あまりにも勢いがありすぎるトランプ氏に引きずられた後、段々と互いの中傷合戦と化し、最終的には「嫌われ者同士による史上最悪の大統領選」とまで評された今回の大統領選となりました。
「偏見や差別的攻撃」をしながら、トランプ氏が勝利を手にしたのはなぜか? 調べてみました。
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まずはトランプ氏 プロフィールから
ドナルド・ジョン・トランプ(Donald John Trump)
あだ名はThe Donald。
生年月日:1946年6月14日
アメリカ合衆国の実業家、作家、資産額41億ドル(約5,084億円)の大富豪としても知られる。
・ニューヨーク州クイーンズ区で、不動産開発業を営む、祖父の代にアメリカに渡ってきたドイツ系アメリカ人の父、およびルイス島生まれの移民であったスコットランド系アメリカ人の母による、富裕な家庭に、5人兄弟の1人として生まれた。ジャマイカ地区で暮らし、父が運営委員を務めるフォレスト・ヒルズ地区の学校に通っていたが、問題行動のため、13歳のときニューヨーク・ミリタリー・アカデミーに入れられた。
・フォーダム大学に2年通ったのち、当時のアメリカでは珍しく不動産学科があったペンシルベニア大学ウォートン・スクールにて1968年に理学士(経済学及び人類学)の学位を取得し、1971年に父親の会社であるエリザベス・トランプ・アンド・サンに入社し、仕事を通じて不動産管理や投資などの知識を身につける。酒もタバコも父親同様にやらない。酒を飲んで、普段と違う自分になったり、肺に煙を吸い込んだりすることに、何の意義も見出せなかった。
・1980年代には、ロナルド・レーガン政権下における未曾有の好景気を背景にした不動産ブームに乗り、オフィスビル開発やホテル、カジノ経営などに乗り出し大成功を収め、アメリカの不動産王と呼ばれることになる。自己顕示欲が旺盛なことで有名で、各種メディアに積極的に露出するだけでなく、自らが開発・運営する不動産に「トランプ・タワー」、「トランプ・プラザ」、「トランプ・マリーナ」、「トランプ・タージマハール」など、自分の名前を冠することでも有名である。
・2011年、ハワイ州が発行したバラク・オバマ大統領の簡易版出生証明(Certification of Live Birth)に疑問を呈し、オバマは実際はハワイではなくケニア生まれで大統領の資格はないのではないかという国籍陰謀論を蒸し返し、破天荒な発言で一部に論争を巻き起こした。
出典:wiki
2回の離婚。現在の妻は3人目
1回目:1977年にIvana Zelnickova(後のイヴァナ・トランプ)と結婚し、ドナルド・トランプJr、イヴァンカ・トランプ、エリック・トランプをもうけるも、1992年に離婚。
左からドナルド・トランプJr、イヴァンカ・トランプ、エリック・トランプ
2回目:1993年に女優のマーラ・メープルズと結婚し1人の子供(ティファニー・トランプ)を授かるが、1999年6月8日に離婚。
3回目:2005年1月22日に、現在の妻であるスロベニア共和国セヴニツァ市出身の24歳年下のファッションモデルのメラニア・クナウス(後のメラニア・トランプ)と結婚した。翌年3月20日に長男が誕生。
出典:wiki
数々の暴言を吐いてきたトランプ氏が勝利した要因は?
大きく分けて、以下の4つがあげられるのではないでしょうか。
1.「メキシコの不法移民は犯罪者でレイプ犯だ」「イスラム教徒の入国を禁止しろ」といったような差別発言はタブーで、考えることもいけないといった米国だったのが、トランプ氏が発言することで、実はアメリカ人の潜在意識にあった「差別」「偏見」といった本音を引き出し、不満を煽り、差別や偏見を口に出してもいいのではないかと歯止めがきかなくなってきた人々が、「差別はいけない」という多数を超え、不満を根底に抱えた人々が、「トランプ氏が代弁してくれた」と支持をした。
2.トランプ氏を支持する層の1つは「保守的な白人層」で、トランプ氏が差別的な公約を掲げても自分には関係ない、自分が被害を被るわけではないからそれほど気にしない人たちで、もう1つの、トランプ氏をいいとは思わないが、クリントン氏がどうしても嫌いで、共和党員としての忠誠心があるからクリントン氏にどうしても入れたくない層が思いのほか多かった。
そのような、一般的政治家イメージを嫌う人はクリントン氏を嫌うため、そのような「政治家は信用できない」という人々をうまくトランプ氏が引き寄せ、究極の選択で、「クリントン氏にいれたくないからトランプ氏にいれるしかない。」
3.既存の政治家であるクリントン氏が大統領になっても何も変わらないという無力感から、もしかしたら何か変わるのではないかという既存の体制を壊したいという衝動から、政治経験ナシのトランプ氏に希望を託した。
4.クリントン氏が女性だったことも一因であるのではないか。
そんなトランプ氏の挙げた公約とは(抜粋)
【経済】
雇用促進と新たな調整計画をもとに税制を改革すると宣言。また、中流階級の厚遇をアピール。
・10年に渡って2500万人の新たな雇用を創出
・法人税の最高税率を35%から15%に引き下げ。
・年収2万5千ドル未満の単身世帯と年収5万ドル未満の夫婦世帯は所得税を免除する。
・税制簡素化、及び減税(但し、富裕層は増税)。
・相続税は排除。
・中流階級の税制を緩和
・アメリカを優先した貿易政策
・減税や規制緩和により、経済成長率を3.5%に増加
・TPPからの離脱
【移民問題】
アメリカ国民の雇用を優先させ、賃金を増やす。合法的に移住してきた人には、経済的福祉を保証する。
・アメリカ南部の国境に壁を作り、メキシコが壁の費用を負担
・200万人の不法滞在の移民を強制送還し、彼らを受け入れない国にはビザの発給を中止
・テロに関与するイスラム教徒移民の入国を禁止
【外交】
他国との外交において、アメリカを最優先すると宣言。中東の国やアラブの同盟国と協力し、イスラム過激派のテロを打倒することを目指している。
・アラブ同盟国や中東の友人とともに、IS(イスラム国)に対抗
・冷戦で勝利したときと同様に、イスラム過激派のイデオロギーを打倒
・テロリストがアメリカに入国するのを防ぐために、移民申請を審査し、移民法を新たに制定
・テロリズムを輸出した歴史を持つ、最も危険で不安定な地域からの移民を一時的に保留
【国防】
軍の再編による国防の復旧を重視している。
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・米軍の現役兵の規模を54万人に拡大し、海軍を再編
・防衛予算の上限を廃止し、軍事投資を拡大
・退役軍人に医療サービスなどの待遇を強化
・サイバーセキュリティを強化し、重要なインフラを保護
・北朝鮮とイランの弾道ミサイルに対する防衛システムに投資
まさかの敗北だったクリントン氏「敗北宣言」の内容
「昨晩、私はトランプ氏を祝福し、国のために協力すると申し出ました。全てのアメリカ人にとって成功を収める大統領となるように願っています。私達のハードワークに見合う成果ではなかったし、私達が共有する価値観やこの国に関するビジョンのために、選挙を勝つことができなくて申し訳なく思っています。
しかし、素晴らしい選挙運動に対して、私は誇りに思うと同時に感謝しています。皆さんのための候補者になれたことは、私の生涯にとって、すごく名誉なことです。
私たちの合法的な民主主義は、平和的な権力の移行を定めています。それとともに法の支配や信仰・表現の自由といった価値を尊重し、守らなければいけません。
(大統領という)最高で最も困難な『ガラスの天井』は打ち破れませんでした。しかし、いつか誰かが、私たち考えているよりも早く達成することでしょう」出典:The Huffington Post
米ニューヨークで敗北宣言を行うヒラリー・クリントン氏(2016年11月9日撮影)
(c)AFP/JEWEL SAMAD
クリントン氏を応援していた著名人の反応は
レディ・ガガ
「トランプ氏大統領当選のニュースを聞いて、車の中で泣くレディ・ガガ」
https://twitter.com/gagamonster96/status/796258176006057984?ref_src=twsrc%5Etfw
マーク・ラファロ
「我々にはやるべきことがある。自分たちが始めたことを終わらせ、反撃しなければいけない。兄弟姉妹たち、頭をあげよう」
You know what we do now? We finish building what we started and we FIGHT BACK! Lift your heads up brothers and sisters.
— Mark Ruffalo (@MarkRuffalo) November 9, 2016
ケィテイ・ペリー
「私たちは黙ったままではない」「座ってめそめそするのはやめよう。前に進もう。私たちは、自分の国を憎しみに支配させたりはしない」
WE WILL NEVER BE SILENCED. #LOVETRUMPSHATE
— KATY PERRY (@katyperry) November 9, 2016
Do not sit still. Do not weep. MOVE. We are not a nation that will let HATE lead us.
— KATY PERRY (@katyperry) November 9, 2016
マイケル・ムーア
「どんな形で終わっても、そこが俺たちの始まりだ」
However this ends, that's where we begin.
— Michael Moore (@MMFlint) November 9, 2016
各国の反応は
【欧州】
ロシア:ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領
「ロシアは米国との成熟した関係を回復させたい意向であり、その準備が整っている」「遺憾ながらも悪化した関係を鑑みると、これが容易な道ではないことは承知している」
ドイツ:アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相
「ドイツと米国は民主主義、自由、法の支配の尊重、そして、出自や肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的信条に左右されない人間としての尊厳という価値観を共有している」と述べ、首脳としての責任について念を押す。
英国:テリーザ・メイ(Theresa May)首相
「英国と米国は、自由と民主主義、進取の気性という価値観に基づいた持続的で特別な関係を築いている。この関係に基づき、次期大統領のトランプ氏と共に、向こう数年間にわたって両国の安全保障と繁栄を確保するために協働していくことを心待ちにしている」
フランス:フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領
トランプ氏勝利により「不確実性の時代」が幕を開けたとして、欧州に対し「団結」し続けるよう呼び掛けた。一方、仏極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首は、トランプ氏の当選は「わが国にとって良い知らせだ」と歓迎。
ハンガリー:オルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相
「素晴らしい知らせだ。民主主義はまだ生きている」
.
【アジア】
日本:安倍晋三(Shinzo Abe)首相
「日米両国は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値の絆で固く結ばれた、揺るぎない同盟国」
中国:習近平(Xi Jinping)国家主席
「私は中米関係を高度に重視し、あなたと協力し、衝突や対立なく互いを尊重する姿勢を保っていくことを期待している」
韓国:朴槿恵(Park Geun-Hye、パク・クネ)大統領
米韓が協力して北朝鮮に圧力をかける方針は「新しい米政権の下でも不変」でなければいけない。
【中東】
イスラエル:ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相
「トランプ次期大統領はイスラエル国家にとって真の友であり、中東での安全保障と安定、平和に向け協働することを楽しみにしている」
パレスチナ自治政府:マハムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長
「2国家共存という解決策の基盤作りに関する次期大統領との協働および、1967年に定められた境界線に基づくパレスチナ国家設立の用意がある」
【米大陸】
カナダ:ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相
「カナダにとって米国以上に近い友人、パートナー、同盟国はいない。貿易や投資、国際平和、安全保障などの問題でトランプ氏との協働を期待している。」
メキシコ:エンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領
トランプ氏への祝意と、協働に向けた姿勢を表明する一方、トランプ氏が掲げていた、両国間の国境に壁を建設し、その費用をメキシコ側に払わせるとの公約について、クラウディア・ルイスマシュー・サリナス(Claudia Ruiz Massieu Salinus)外相は「壁の費用負担はわれわれの構想にはない」と拒否する意向。
出典;(c)AFP
しかし 全米各地でトランプ氏反対デモが
トランプ氏への支持数は半数を超えたものの、やはり強硬に彼を拒否する多数の人々がいるわけで、ニューヨークの中心部ユニオン・スクエアでは1万人以上が集結し、「性差別主義者で人種差別者のトランプよ、お前の居場所は米国にはない」などと叫びながら、デモに参加する人々が道を埋め尽くし、トランプタワーまで行進しました。
アメリカ国民のみならず、私たち日本もどうなっていくのでしょうか。他人事ではありません。
見守っていきたいと思います。
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